中々ありつけない!

まだ肌寒い2010年の3月、僕はある一つの悩みを抱えていた。
クレジットカードの支払い金額が、所持金と仕送りを合わせた額を越えていたのだ。

 

そこで、以前ネット上で目にした「交通量調査」のアルバイトに手を出すことにした。
短時間で楽に稼げる。暇で苦しいという話も聞くが、その時期の僕にはなんとも魅力的な業務に見えて仕方なかったのだった。
いや、一瞬でもぐらっとくる人がほとんどだと思う。

 

早速求人サイトの求人情報通りに電話をしてみる。
が、募集開始から1日しか経っていなかったのに既に募集は終了していた。やはり楽なバイトという話は伊達ではないらしく、競争が激しいようだ。
他の日払いのアルバイトからはことごとく突っぱねられた。他の選択肢は捨てて交通量調査一本に縛って粘ることに。

 

2度目。次の日の朝10時頃から募集を始めるというので、次の日、10時になった瞬間に電話をかける。
が、僕を迎えたのは「話し中です」というメッセージだった。
何度かけ直しても繋がらず、結局募集は終了してしまった。競争率の高さに驚く。

 

 

そして3度目の挑戦でようやく説明会に行けることに。デパートでアンケート調査をするアルバイトだった。

 

が、しかしこれもダメだった。今思えば、見た目が冴えない男が街頭アンケート調査に採用されるというのは無茶な話だと思う。

 

 

  • 交通量調査のアルバイトは電話で応募するのが基本。人気が高く、競争率も激しい。募集開始時刻に張ったほうが良い。
  • デパート内でのアンケート調査といったコミュニケーション能力が必要な調査では見た目の印象などで合否が分かれることもある。

説明会へ

4度目の挑戦。募集時刻丁度に電話を掛けてどうにか説明会のアポを取り付ける。

 

翌日、会社へ説明会を受けに行った。
決して広くはない部屋に40人程度。そのうち半数ほどがくたびれた男性で、さらに半分が4、50代に見えた。学生風の若者は思った以上に少なく、女性は1人もいなかった。律儀にもスーツで正装した人もいたが、極少数だった。

 

そんな部屋にやがて社員とおぼしきスタッフが来た。彼から仕事の説明があるらしい。来た人数に対して折りたたみ椅子が少なかったので、折りたたみ椅子を追加してから説明会に入った。3、4枚の説明書と登録用紙が配られる。バイトの合否にはいい思い出が無いので面接で選考する、などということが起こりそうもないのでホッとする。

 

先ほど到着したスタッフの口頭と説明書による打ち合わせが始まる。調査内容は4人1組になって、交差点を行き来する車や通行人をカウントするというオーソドックスなものだった。交通費はこの説明会の分のみ支払われ、当日は休憩所の類もない。休憩時間や冬の寒さをやりすごすための経費も馬鹿にならなそうだ。

 

説明が終わると今度はスタッフの登録。少なくとも面接で落とされるなど、そういうことが無いようなのでホッとする。

 

住所、氏名、携帯電話番号など必要な情報を記入していく。印鑑も必要だった。

 

と、登録用紙を集めている最中に社員の口から「交通量調査だけで暮らせるとは思わないで、あくまで小遣い稼ぎみたいに思っていて」と諭すような口調で注意があった。

 

この部屋に集まった人間にニューカマーが多いのか、毎回のように参加している常連ばかりだったのか、はたまたその両方か。どちらにせよ、この仕事が想像以上の苦痛を伴うものだということを予感させた。

 

ともあれ登録用紙を提出すると、交通費を支給された。その日やることはそれで最後。その場をあとにするだけだった。

 

上着は既に持っていたが防寒対策に不安が残っていたので帰りに暖かそうなももひきを買って帰った。1000円くらい掛かった。

 

 

  • どんな調査であれ、指定がない限り説明会の段階で正装する必要はない。
  • カウント調査には女性はほとんど参加しない。

そして当日の朝

最寄りの駅に集合。指定された時刻は朝6時。早起きとは無縁だったその頃の僕には少し堪えた。
しかも寒い。始末の悪いことに北風も弱くなかった。

 

スタッフにより調査員全員の集合が確認されると、タクシーでそれぞれに指定された調査地点に向かうことに。
僕以外の3人は皆ひと目で30代以上と分かる男性だった。もちろんのこと僕を含めてコートに手袋に帽子と全員厚着をしている。

 

カウンターや折りたたみ椅子などの道具を渡され、タクシーのトランクに積み込み、いざ出発。静かな車内で運転手と助手席に座った男の話が弾んでいた。

 

調査地点に到着すると、トランクから道具を取り出し、全員で協力して準備をする。お互いに礼儀正しく「宜しくお願いします」と声を掛け合い、つつがなく準備は終わった。恐らく僕以外は皆調査に何度も参加していて手馴れているのだと思う。

 

手はず通り交差点の4隅のうち3箇所にそれぞれ1人が付いた。3時間ごとに1人が交代して休憩に入る。ローテーションはジャンケンで決めたものだった。
1人は調査開始と同時に休憩に入る形となる。

 

 

そして7時、調査が始まった。

 

  • 調査地点が近くない場合、タクシーでチームごとに移動することになる。
  • 基本的に早朝、もしくは深夜から始まることが多い。

調査開始

寒い。寒すぎる。

 

午前7時。僕を含めた3人が折りたたみ椅子に座って道路に向かいカウントを開始したわけだが寒空の下、通行人や自動車の種類を見据え、じっとしながらカウンターをポチポチするのは想像以上に堪えた。ももひきもコートもあまり役に立たない。念のためカイロを身体の何箇所かに貼ったがそれでも寒い。耳が寒い足元が寒い。2時間後の休憩が待ち遠しい。

 

そういえば雨が降ったらどうしよう。冬の雨は少ないとはいえ、防寒対策ばかりに気を使っていた僕はあまりにも迂闊だった。

 

そのままどうにか寒さに耐えながら調査を続けていると2時間が経過。やっと僕の休憩ローテーションが回ってきたらしい。

休憩のはずが…

待ちに待った休憩時間。交代に来た調査員と2、3言交わして

 

だがしかし、自由に動き回れる喜びに浸れるのはつかの間で、休憩時間も思い悩むことに…。
理由は大きくまとめると以下の3つに絞られた。

 

  1. 体を落ち着ける場所がない
  2. 最大の要因はこれ。

     

    気兼ねなく腰を落ち着けられる場所は思いの外限られる。ヤンキーよろしくコンビニの前に座り込むわけにも行かないし、飲食店に行くとお金を取られる。そういうわけで公共の施設に頼ることになるわけだが、それも見つからない時は近所を徘徊することになる。当てもなく彷徨うその様は不審者以外の何物でもない。

  3. 暇をつぶす道具がない
  4. 一応その日はゲーム機を持っていったのだが、野外で楽しむにはあまりにも初春の寒さは厳しかった。

  5. トイレを気軽に使えない
  6. トイレのある施設も限られる。コンビニに何度も入り浸るのも気まずい。

 

更に冬の寒さに耐えるため、温かい飲み物や追加のカイロを休憩のたびに買い込むはめに。なけなしのお金が飛んでいく。
これでは何のために調査に参加したのかさっぱり分からない。

 

しかたなく近所にあるお店を冷やかしながら休憩時間を過ごしたのだった。
落ち着くのにも1時間という休憩時間はあまりにも短く感じた。

調査終了〜報酬ゲット

調査中じっとしていると肌寒いし休憩時間も疲れを取るのが難しい。この頃になると暇疲れが積み重なって、椅子から立ち上がって調査するのがデフォルトになっていった。

 

ちょっと出歩くのはまずい(時々スタッフが自転車に乗って様子を見に来る)が、立ち上がるだけなら何の問題もない。その場を2、3歩うろうろするだけでも気が紛れたし、身体も温まった。

 

そして午後7時、とうとう調査が終わった。休憩に入っていた1人が戻って来る。記入の終わった調査用紙をまとめて紙袋に入れ、機材をまとめてタクシーが到着次第集合場所の駅に帰還する。皆疲れきっていて、タクシーの中は静かだった。

 

駅に戻ると、いよいよ報酬を受け取って帰宅することになる。スタッフの元に並んで待つことに。
精算用紙に自分の氏名、住所、電話番号を書き、印鑑を捺印するのだがあいにく僕は書くのを忘れていて、やむを得ず順番を待つ間に壁を下敷きにして記入した。不注意にも程が有る。

 

調査時間12時間、実働9時間で10000円。時給にして1000円強とアルバイトにしては結構な値段だが、余計な経費をかけてしまった為、実利は2000円ほど下回った。

 

数々の反省点を抱えたまま帰宅。

初めての24時間調査
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空港のバスゲートでの調査
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公園での交通量調査
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